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ビセンテ・アランダの 偏愛交差点
El cadaver exquisito



スペイン
1969年

AKA:The Cruel Women/
The Exquisite Cadaver/
The Exquisite Corpse

製作会社:Films Montana
監督:Vicente Aranda
音楽:Marco Rossi

キャスト:
Teresa Gimpera, Carlos Estrada Judy Matheson, Capucine, Luis Ciges, Eduardo Doménech, Luis Induni, Víctor Israel

<ストーリー>
編集者カルロス(カルロス・エストラダ)の勤務先に突然、差出人不明の小包が届く。いぶかしげに小包を開封したカルロスは卒倒する。何と梱包されていたのは切断された若い女性の手であった。
 そして、帰宅するとまたしても小包が届いている。戦慄するカルロスに疑心を抱いた妻テレサ(テレサ・ヒンペラ)は有無も言わせず小包を開封してしまう。すると今度は切り刻まれた女性の衣服と見知らぬ女性の写真が現れた。しかも小包と共に電報が添えてある。「先ほど送った‘女性の右手’には満足されましたか。」
 実は2年前、カルロスはテレサに隠れてエッシャー(ジュディ・マティソン)という女性と火遊びを楽しんでいたのだ。そして、カルロスに捨てられたエッシャーはその後自殺を図っていた。同封されていた写真の女性はエッシャーに他ならなかったのである。
 しかし、真実を打ち明けないカルロスに業を煮やしたテレサは彼の動向を探っていく。そして、偶然ミステリアスな女性ルシア(カプシーヌ)に巡りあうこととなる。ルシアはかつてエッシャーとレズビアン関係を持っており、エッシャーを自殺に追い込んだカルロスに復讐の念を抱いているのである。
 戦慄するカルロス、疑念を募らせるテレサ、復讐に燃えるルシア、死してもなお影響を与え続けるエッシャー。今4人は同じスクランブル交差点を横断し始めた。
<解 説>
 本作はマルコ・ロッシによるムーディなジャズスコアが印象的な昼メロ風のスリラー作品であるが、70年代に入りアランダが傾注する性へのアプローチが既に確認できる。本作のテーマがレズビアン、そして女性蔑視への問題提起であることは理解できるが、そうした主張はスペインの厳しい検閲を通過するために抑え気味の演出に留まり、遺体のパーツ切断等の猟奇描写を織り込むことでレズビアンの偏愛を表現している。よって、本作は当時スペインの映画作品で主流だった昼メロのスタイルを用いつつも、性問題に取り組んだ先駆的作品となった。こうしたアプローチは70年代に入り検閲が撤廃されるまで、他作品が多用することとなる。
しかし、先駆的というのは検閲の厳しいスペインだから言えることであり、当時における他国の同類作品と比べたら、ぬるま湯のような中途半端な作品である。本作はあくまでもスペイン国民向けのソフトランディング的作品と言えよう。
 さて、本作の魅力を挙げるとしたら、アランダらしいシュールな映像演出と美しい女優陣達であろう。
 主人公の編集者がLSD漬けにされて自殺した愛人の幻を観るシークエンスは当時流行っていたサイケデリックというよりもヌーベルバーグ作品の影響を確認できる。無機質的に映し出される女体のパーツと複数の黒白スチル写真を効果的にコラージュさせた映像は正に初期のアランダと言えるものである。こうした映像処理は彼の処女作『ファタ・モルガナ』(1965年)でも見受けられるアプローチである。
 そして、本作でミステリアスなレズビアンを魅惑的に演じたのは『ピンク・パンサー』(1963年)や『何かいいことないか仔猫ちゃん』(1965年)等のフレンチ女優カプシーヌ。そして、疑念を募らせる編集者の妻を巧く演じたのがアランダの初期御用達であるテレサ・ヒンペラ。私にとって、本作の魅力はこの二大アクトレスの競演につきる。どちらも美しいだけでなく、本作のテイストを印象付けるに足る冷ややかな演技が印象深い。

2008.01.14 All rights reserved by Lina Romay???