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レオン・クリモフスキーの 暗黒の第三惑星
Último deseo



スペイン
1975年

AKA:Planeta Ciego/
The People Who Own the Dark/
 Last Desire

製作会社:Newcal
監督:León Klimovsky
プロデュース:José Luis Renedo, 
Salvadore Romero
音楽:Miguel Asins Arbó

キャスト:
Jacinto Molina, Teresa Gimpera, 
Nadiuska, Alberto de Mendoza, 
Tony Kendall, Maria Perschy,
 Ricardo Palacios, Emiliano Redondo

<物語>

 ボーン(ポール・ナッチー)やベルタ(テレサ・ヒンペラ)を始めとする風変わりな富豪達は刺激的な快楽を貪るために、人里離れた古城に集い、サディスティックかつエロチックな宴会を催していた。すると突然、これまでにない凄まじい激震が彼らを襲う。
 何事が起こったのかを理解できない一同は原因を確かめるために近くの村に下ってみると、そこは阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。その村で生き残った人々は皆視力を失っており、盲目のまま食料を求めて辺りを彷徨っていたのである。どうやら、核戦争が勃発してしまったらしい。
 ところが、エゴイスティックな富豪達は食料等を略奪した挙句に、村人達との小競り合いから誤って彼らの一人を殺してしまう。これに怒りを爆発させた盲目の村人達は一致団結して、富豪達がろう城する古城を襲撃する。ここに人間同士の血で血を洗う悲惨なサバイバルゲームの火蓋が切って落とされたのだ。

<解説>

 本作についてはバルセロナ派を標榜する
ビセンテ・アランダが原作を手掛けているという点からも、一般的なホラー作品ではないことを察することができよう。当時の著名なスペイン映画監督達はコメディやサスペンスなどの様式を用いて、暗に体制批判を繰りひろげていたが、それはアランダとて同じこと。本作の原作は明らかにアイロニカルな体制批判に満ちている。
怠慢を貪り利権を行使するブルジョア層をエゴイスティックな富豪達に置き換え、骨抜きにされている一般市民を盲目となった村人達になぞらえて、フランコ政権崩壊後の混乱をドラスティックに表現しているのだ。本作が
フランコ将軍死去時である1975年に製作されているという事実は留意すべきである。
 しかし、最後に勝利を手にするのは盲目の村人達(スペイン市民)ではないのだ。本作は村人を富豪もろとも廃棄物のように葬り去ってしまう。それは戦後のスペイン史に対する全否定に他ならない。ラストにおいて本作は新しい時代の到来を宣言するが如く、荘厳なる「第九」を奏でながら幕を閉じるのである。
 さて、そうしたアランダの脚本をビザールな娯楽作品へと退化、いや昇華させたのが職人監督
レオン・クリモフスキーだった。クリモフスキーは本作にスペインで人気のあった怪奇俳優ポール・ナッチーやテレビCM等でひっぱりだこのテレサ・ヒンペラ等をキャスティングする一方、プロットにさして関連性を持たないエロチックな演出や尋常ではない人物描写等を随所に散りばめたのである。それらは今見ると苦笑を誘うものであるが、その対象が不具者であるがゆえに後味が悪いことこの上ない。
 特に盲目となった村人達の人格を否定するような非条理な演出については物議をかもすこととなるだろう。彼らの描き方はどう見ても人間ではなく、
ジョージ・A・ロメロの『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』Night of The Living Dead(1968年)のゾンビそのものである。しかも、本作のプロット自体が奇しくもロメロの「第2のカサンドラクロス事件!? 細菌兵器に襲われた街」The Crazies(1972年)に類似しているため、一層ロメロの影響を禁じえないのである。それでも、目が見えない割には惨殺した富豪をわざわざ天井から吊るしてみたり、どこで手に入れたのか多くの村人がグラサンを着用していたり等、盲人が過度の自己主張をするあたりの悪乗り演出はサービス精神旺盛なクリモフスキーらしいものである。
 更に眉間に皴がよってしまうのは、名優
リカルド・パラシオス演じるロバートソン医師の痴態である。ロバートソン医師は罪悪感に苛まれた挙句に発狂してしまうというものであるが、その演出がこれまた尋常ではない。丸々と太った関取のようなパラシオスが素っ裸になって床を這い回るのである。しかも、ハアハア言いながら、犬の様に四つんばいで皿に盛られた餌を貪るという過剰演出は我々の嫌悪感を極限にまで引き上げる。パラシオスの体当たり演技には敬服させられるが、本作において彼の演技が必ずしも報われているとは言い難い。
 いずれにせよフランコ将軍死去後とはいえ、よくもまあ当時スペインが本作の公開を許可したものである。本作は正に熱きスペインの息吹を感じることができるビザール・ホラーなのである。そして、人権侵害ととられても仕方のない本作が今後ソフト化されることはないだろう。


2007.05.01 All rights reserved by Lina Romay???