こんな感じで書いてます。本になるから、転載しないでね。って、そんな物好きはおらんでしょうが。
【本文抜粋1:ウィリアム・グレフェの章より】
T.イルカの出てきた日
アメリカ東海岸に位置するフロリダは温暖な気候や大自然に恵まれ、保養やレジャーにもってこいの環境を有している。よって、ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート、シー・ワールド・オブ・フロリダ等を挙げるまでもなく、フロリダ州がこうした環境を利用してもらおうと多くのレジャー産業を積極的に誘致している様は当然の成り行きであろう。つまり、この州の主だった収入源は観光業となるわけである。
しかし、こと映画産業については60年代後半まで特に語るべきものが見当たらない。『大アマゾンの半魚人』Creature from the Black Lagoon(1954年)でギルマンを演じたリコー・ブラウニングRicou Browningがフロリダにおけるパイオニアとして幾分記憶されているが、当時フロリダはインディペンデントのフィルムメーカー達からも相手にされていない映画産業後進地域だったのだ。特に当地における人材不足は深刻なもので、映画製作を心得たテクニシャンは僅かなハリウッドのリタイヤ組に反カストロのキューバ移民を加えた程度という有様だったらしい。
そんな状況で気を吐いていたのが、ゴア・ムービーの始祖ハーシェル・ゴードン・ルイスHerschell Gordon Lewisやヌーディスト映画を量産していた変態女監督ドリス・ウィッシュマンDoris Wishmanだった。しかし、フロリダにおけるもう一人のカルト監督を我々は見過ごしてはならない。
折しも1965年、フロリダにおけるドライブイン・シアターの興行広告に突如いかがわしいダブル・フィーチャーが掲載された。そこには「広大なフロリダの秘境にて撮影された・・・ これこそがホラーだ!」なる宣伝コピーが踊っている。更には口を大きく開けたアリゲーターに、ビキニ美女に手を伸ばすインディアン・ゾンビ、半裸の美女を捕まえているクラゲの怪物などのイラストを配した正にゲテモノの極みと言えるデザインである。フロリダ発のゲテモノ・ホラー作品の登場にドライブイン映画マニア達は色めきたった。
かくして、本ダブル・フィーチャー『タートゥ 死霊の呪い』、『Sting of Death』を監督したウィリアム・グレフェWilliam Grefeは後に『わんぱくフリッパー』のヒットに象徴されるように、フロリダにおける映画発展に寄与した功労者の一人として脚光を浴びることとなったのである。
【本文抜粋2:ウィリアム・グレフェの章より】
グレフェは身勝手な合理主義を徹底的に否定する。それは人間に限らず、動物であろうと怪物であろうと容赦はしない。加害者に報復する被害者が復讐を成就した時点で逆に加害者となる。お互い加害者となった両者は悲惨な死をもって人生を清算するのだ。たとえ加害者や被害者が人間であろうとなかろうと。ヘビや鮫に危害を加える輩どもを抹殺していた主人公は最後には自分の愛するヘビや鮫の餌食となってしまうし、『The Checkered Flag』ではエゴ丸出しの夫に復讐をする妻は最後に不具者となり、『タートゥ』では考古学と証して墓荒しをする博士のクルーに襲いかかる呪術師タートゥは底なし沼に落ちてしまうといった具合にである。
グレフェは確かに大自然を有するマイアミで育っているし、愛らしい『わんぱくフリッパー』も製作している。しかし、恐らく彼は動物愛護主義者ではないだろう。グレフェが『ウィラード』の原作から動物パニックブーム到来を予期して『残酷ヘビ地獄』の製作を思い立ったのは事実であるが、何よりも原作者の描いた‘主人公ウィラードの屈折したエゴイズムの崩壊’に強く共感したのは間違いないと思う。鼠であれ人間であれ、彼らは時に被害者にもなるし、加害者にもなるのだ。‘今日は被害者、明日は加害者’、これこそがグレフェの作品に流れる道理テーマである。
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